離婚するはずが、心臓外科医にとろとろに溶かされました~契約夫婦は愛焦れる夜を重ねる~
廊下で暁斗とふたりになる。まだ暁斗はスクラブに白衣を纏った姿だ。仕事の途中だったのだろう。
「……いつから聞いてたんですか?」
「君が地味だと言われていた辺りからだな」
「うぅ、割と最初からでしたね」
ほとんどのやり取りを聞かれてしまっていたらしい。いたたまれず凛音は肩を竦める。
「すみません……奥さん面して、偉そうな事を言ってしまいました」
夢中で言ってしまったが、『剣持をお願いします』的な発言だった。冷静に考えるとかなり図々しい。暁斗は気を悪くしてしまったのでは無いだろうかと心配になる。
「いや、構わないし、むしろ……」
「えっ?」
珍しく暁斗が言葉を濁して言いにくそうにしている。
どうしたのだろうと不思議に思った凛音が暁斗の顔を下から見上げるようにすると目が合う。
暁斗は少し困った顔をしたあと、ふっと表情を緩めた。
「ああいう風に言って貰えて助かった……いや違うな。嬉しかった――ありがとう」
「!」
思いがけない暁斗の言葉に凛音は驚いた。
彼とは必要な言葉は交わすし、日常生活の中で『ありがとう』と言われた事は何度もある。でもこんな風に心のこもった『ありがとう』を言って貰ったのは初めてだ。
「……いつから聞いてたんですか?」
「君が地味だと言われていた辺りからだな」
「うぅ、割と最初からでしたね」
ほとんどのやり取りを聞かれてしまっていたらしい。いたたまれず凛音は肩を竦める。
「すみません……奥さん面して、偉そうな事を言ってしまいました」
夢中で言ってしまったが、『剣持をお願いします』的な発言だった。冷静に考えるとかなり図々しい。暁斗は気を悪くしてしまったのでは無いだろうかと心配になる。
「いや、構わないし、むしろ……」
「えっ?」
珍しく暁斗が言葉を濁して言いにくそうにしている。
どうしたのだろうと不思議に思った凛音が暁斗の顔を下から見上げるようにすると目が合う。
暁斗は少し困った顔をしたあと、ふっと表情を緩めた。
「ああいう風に言って貰えて助かった……いや違うな。嬉しかった――ありがとう」
「!」
思いがけない暁斗の言葉に凛音は驚いた。
彼とは必要な言葉は交わすし、日常生活の中で『ありがとう』と言われた事は何度もある。でもこんな風に心のこもった『ありがとう』を言って貰ったのは初めてだ。