離婚するはずが、心臓外科医にとろとろに溶かされました~契約夫婦は愛焦れる夜を重ねる~

 身長は158センチ、ウエストは細めだが胸もやっと人並み程度あるかどうか。染めたことのない黒髪は扱いやすいので肩甲骨あたりまで伸ばして常に後ろで結ぶようにしている。
 顔つきも華やかというより、小ぶりなパーツで揃っていて、おとなしめな印象。美人だった母に似ているところと言えば少し目が大きくて睫毛が長いくらい。

 それに質素倹約に努めているので、服装もファストファッションを着まわし、プチプラコスメで最低限のメイクを仕上げる技術には長けてしまった。
 職場的に清潔感だけは気を使っているが、華のあるオシャレには縁が無い。制服のある職場で良かったと心から思っている。

「とにかく、お父さんが遺してくれたお金があるから大丈夫なんですよ。生命保険とか」
「でもなぁ……あ」
 
 凛音の言葉が信じられないのか、福原は心配気に続けようとしたのだが、誰かに気付いたように声を上げた。

「剣持先生!こっちこっち!ここ空いてるよー」

 福原はさらにヒラヒラと大げさに手を振ってアピールする。これ以上追及されたくない凛音は話が途切れたことにホッとしたする。
 
 大声で呼ばれた人物はあからさまに顔を顰め、面倒だとういう雰囲気を隠さないまま食事の乗ったトレーを持ってこちらにやってくる。
 彼は福原の隣、凛音の斜め前に座った。

「剣持先生、お疲れ様です」
「あぁ、お疲れ」

 凛音が挨拶をすると低い声で短い反応が帰返って来る。
 
 不機嫌そうな表情でも、やっぱり恐ろしく整った顔をしているな、と客観的に凛音は思う。
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