離婚するはずが、心臓外科医にとろとろに溶かされました~契約夫婦は愛焦れる夜を重ねる~
 今まで自分なりに何とかしようと思っていたが、暁斗が言うようにプロに色々聞いてみるのも良いなと思った――だが、ひとつひとつの値段はかなり高く、凛音の愛用ファストファッションのワンピースが軽く10着以上買えてしまうほどだった。総額を考えると恐ろしい。

「……すみません、私の為にかなりお金使わせてしまって」
「気にするな。それに、すみませんと言うより、ありがとうって言ってくれた方が俺は嬉しい」
「……はい、ありがとうございます」
 
 彼の気持ちが素直に嬉しくて、凛音が笑顔で言うと「それでいい」と暁斗は満足気な顔をした。



「あ!あれって、有名なパン屋さんですよね」

 せっかくだから少し銀座の街を歩こうと暁斗に誘われデパートから出ると、道を挟んだ向かいに昔ながらの店構えのパン屋があった。全国的にも有名なパンの名店だ。

「そうなのか?昔からずっとここにあるが、確かに老舗っぽい雰囲気だな」
「確か、あんパンで有名なんです」

 パン屋の娘として、パンにはそこそこ詳しいし、興味がある。

 行ってみるかと言ってくれた暁斗と一緒に店に入ると、ディスプレイされたさまざまなパンが所狭しと並んでいる。

「うわぁ、すごい……!」
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