離婚するはずが、心臓外科医にとろとろに溶かされました~契約夫婦は愛焦れる夜を重ねる~
 あんパンだけでも定番の物から、生クリーム入り、季節の栗や芋を使ったものなど様々ある。総菜パンや、食パン類も多種多様だ。

(当たり前だけど、米田パンでは考えられない種類の多さ!生地も色々、全部食べてみたくなる……)

 つい我を忘れて見入ってしまい、しばらく暁斗を置き去りにしていた事に気付けなかった。
 暁斗は少し離れたところに立って店内を眺めていた。背が高いのですぐ位置はわかる。

「暁斗さん、ごめんなさい。つい夢中になっちゃって」

 慌てて暁斗の所に戻ると彼は別に気にする風でも無く「ここの3F、レストランになっているみたいだから昼飯にするか?」と凛音を誘った。

 レストランは1Fのパン屋直営店で、明るくレトロな雰囲気だ。
 ふたりは窓際の席に案内された。
 食事を注文すると、焼きたてのパンが食べ放題になるサービスが付いているらしい。暁斗はカニクリームコロッケ、凛音はビーフシチューを注文した。
 カゴに入った数種類のパンを店員が好みに応じて皿に乗せてくれる。

「暁斗さんっ、このパン、くるみが香ばしくって美味しいです」

 次々とパンを試し、少し硬めのくるみとチーズのパンを食べた凛音は声を上げる。
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