離婚するはずが、心臓外科医にとろとろに溶かされました~契約夫婦は愛焦れる夜を重ねる~
 急に話が大きくなって来て凛音は驚く。

「いいも何も、俺が食べたい……そうだな、メロンパンがいい」
「……メロンパン、ですか」

 メロンパンは米田パンの看板商品だった。暁斗が食べた事があるかは分からないが、食べたいと思ってくれるのなら作ってみたいと思った。

「上手く出来るか分からないけれど、作ってみますね。でもとりあえず今のオーブンのままで大丈夫ですから」

 そうか?と暁斗はしばらく納得がいかない顔をしていたが、急に思い出したように話し出す。

「そういえば、君のお父さんの店は『米田パン』だったろう?米なのにパンって面白いなと前から思っていたんだが、違う名前にしようと考えなかったのか?」
「ふふ、確かに、子供の頃同級生に『米なのにパン屋』ってからかわれました。あえてそうしてるんだってお父さんは言ってましたけど、たぶんネーミングセンスが無くてそのままにしちゃっただけだと思います」

 パン作りのセンスはあったけれど、他は微妙に不器用だった父の事を思い出して凛音は微笑む。

「それを言うなら、俺も外科医で『剣持』だろう?剣ならぬメスでむやみに切られそうなイメージで恐ろしいと言われたことがある」
「言われてみれば……!」
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