離婚するはずが、心臓外科医にとろとろに溶かされました~契約夫婦は愛焦れる夜を重ねる~
「でも、何かあったら……」
「大丈夫だ。仕事が終わったら早く帰って来てくれればいい」

 心配する凛音の頭を暁斗は一度撫で、目を瞑る。しばらく彼の様子を見守った後、後ろ髪を引かれつつ凛音は出勤することにした。

 休日出勤となる今日は外来も無く、業者の立ち合いだけなので制服にも着替えないでいい。少し気楽だ。医事課では博美ともう一人男性の事務職員と凛音の3人で立ち会う事になっていた。
 
 午前中にトラックが到着し、すぐに作業が始まった。作業の間は、凛音たちは事務室で待機している。

「今日は外来も無いから、普段できない仕事が捗って良いわね、やっとこの書類の山がファイリング出来るわ」

「私もお手伝いします」 

 博美と普段忙しくて手を出せなかった書類整理などをしつつも、凛音は暁斗の事が頭から離れなかった。

(寝ているのに電話したらダメだよね……)

 少し辛そうな寝顔を思い出す。そういえば彼の寝顔を見たのは初めてだったと今更ながらに気が付いてしまった。
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