離婚するはずが、心臓外科医にとろとろに溶かされました~契約夫婦は愛焦れる夜を重ねる~
「暁斗さん……頭痛は?大丈夫なの?」

 凛音がやっと出せた声は震えていた。

「ずっと寝てたら良くなったし、定岡さんから君がこの風雨の中病院から飛び出していったって連絡もらった瞬間に心配で吹っ飛んだ。すぐに部屋に戻って着替えよう――凛音?」

 暁斗に手を引かれたのだが、凛音は動けず、立ちすくんだまま涙を零していた。

「わたし、暁斗さんがいなくなっちゃったらどうしようって……お父さんみたいになっちゃったらって」

 緊張状態から一気に解放された凛音は、小さい子供のようにポロポロと泣き始めた。

 暁斗を失う事への不安や父への思いなど色々な感情が溢れぐちゃぐちゃに絡み合ってしまい、取り留めの無い言葉が止まらない。

「……おとうさん、ごめんなさい……りょうすけも、お姉ちゃんのせいで、おとうさんいなくなっちゃった……ごめんなさい」

 一度決壊してしまった感情と涙は止める事が出来ず、凛音は肩を震わせ泣き続ける。

 すると凛音のずぶ濡れの身体が逞しい腕に包まれた。

「さっき君を心配した遼介くんから連絡があって、お義父さんが亡くなった時の事は聞いた――俺が専門医として客観的に君のせいじゃ無いって言っても、きっと君は自分を責め続けるんだろうな」
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