三次元はお断り!~推しが隣に住んでいまして~
死ぬ!! 推しが尊いから生きる! いやどっちだよ俺ぇええええもうわっかんないよおおおお!!
「スズちゃん?」
あああ加えてまたもや首こてん頂きましたーーー! えっ何コレわたし今日死ぬの? もしかしてもう死んでる? これが天国? それとも今際の際に見るという幸せな夢……!?
いくらルイさんじゃなくて累さんだよ弟さんだよって思おうとしてもここまでサービス過剰だと! 平常心が保てないです無理!!
「累。るーい」
わたしがいっぱいいっぱいになっていると。
「その辺にしときな。その子、男慣れしてないから」
なんという助け船! 先輩一生付いていきます……!!
「慣れってそんな、え? ……男慣れ? って何」
「そのまんまだよ。男に免疫ないの。一対一で喋るとか食事するとか、ほとんどしたことないんじゃない? そもそも、あんまり近付くなオーラ出してたしね」
改めて言われるとわたしのコミュ弱っぷり酷いな!? もうこれ弱じゃなくて障だな!?
いや確かに避けて通ってきましたけど……!
……と、いうわけで離して下さい、その手を。
とちらり、推しを見上げると。
なんと推しは、嬉しそうに肩をすくめて笑ったあと、わたしの手をまるで壊れ物を扱うように、両手でふわっと包み直した。
「そういう『慣れてない』か。……かわいいね」
ヒーーーーー!!
「わかった、いいよ」
スリ、と親指が手の甲を撫でる。そうして累さんは、グラビアでも見た事がないくらいの輝かしさでニッコリ笑った。
「ゆっくり、俺にだけ、慣れてね。スズちゃん」
いや、あの、もうあの。
「……せ、」
キャパオーバーです。
無理。
「せんぱぁい……」
「あーはいはい、累そこまで。ホラ手ェ放しな、あと三秒で泣くよその子。リンはこっちおいで」
「せんぱぁい~……」
え、泣いちゃうの!?
……と累さんが怯んだ隙に、ふらふら両手を広げる先輩のとこまで避難する。
「もう無理ぃ~……」
ぼふん、と豊かなお胸に飛び込む。先輩は頭の上でわはは、と笑った。
「アンタそれで、今までよく社会人やってこられたねぇ」
「黙ってデスクで詰まれた伝票入力するのが仕事です~……ほとんど個人プレーです~……」
「なるほど、狙ってそこ行ったな?」
「だってヤだもんニンゲンこわいもん」
「怖くないって。あんたのそれ、ホントどっから来てるんだろうね」
よしよし、と先輩は抱きついたわたしの頭をぐりぐり撫でた。うう、お胸ぽわぽわで最高に暖かいです先輩。すき。
「で、いつまでその皿握ってんの?」
ハッ!
「そうだおかわり!」
「そうそう。悪いね。焼いてきてやってよ」
「喜んで!!」
そうだよわたしの羞恥心より推しの空腹!
シャキっと立ち直ってキッチンに飛び込んだわたしのうしろで、クックック、と押し殺したような笑い声がする。
「喜んで、作っちゃうんだ……」
ちら、と目だけで振り返ると、先輩と累さんは肩を寄せて何やら笑っていた。さすがに、話している内容までは聞こえてこない。
ホント仲良いなこの姉弟、と思いながらトースターにバゲットを入れる。
グラタンふつふつとろーりチーズが焦げるまで、とスタートのボタンを押したわたしには、だから姉と弟がどんな会話をしてるかなんて少しも気付ける筈なく。
「で、落とす気なの。もう最初っから好きでしょ、あの子のこと」
「好きだけど、人聞きが悪いな。違うよ。懇願するんだよ、振り向いて欲しいってね」
「ふ~ん……」
「甘やかして、だいじにだいじにするんだ。あんな可愛い子、指咥えて黙ってなんて見ていられないでしょ」
「そ。泣かせたら許さないからね」
「嬉し泣きはノーカン」
「そこまでさせられるかどうか、やってみな」
不穏なその企みを、知ることなんてできなかったのだ。
「スズちゃん?」
あああ加えてまたもや首こてん頂きましたーーー! えっ何コレわたし今日死ぬの? もしかしてもう死んでる? これが天国? それとも今際の際に見るという幸せな夢……!?
いくらルイさんじゃなくて累さんだよ弟さんだよって思おうとしてもここまでサービス過剰だと! 平常心が保てないです無理!!
「累。るーい」
わたしがいっぱいいっぱいになっていると。
「その辺にしときな。その子、男慣れしてないから」
なんという助け船! 先輩一生付いていきます……!!
「慣れってそんな、え? ……男慣れ? って何」
「そのまんまだよ。男に免疫ないの。一対一で喋るとか食事するとか、ほとんどしたことないんじゃない? そもそも、あんまり近付くなオーラ出してたしね」
改めて言われるとわたしのコミュ弱っぷり酷いな!? もうこれ弱じゃなくて障だな!?
いや確かに避けて通ってきましたけど……!
……と、いうわけで離して下さい、その手を。
とちらり、推しを見上げると。
なんと推しは、嬉しそうに肩をすくめて笑ったあと、わたしの手をまるで壊れ物を扱うように、両手でふわっと包み直した。
「そういう『慣れてない』か。……かわいいね」
ヒーーーーー!!
「わかった、いいよ」
スリ、と親指が手の甲を撫でる。そうして累さんは、グラビアでも見た事がないくらいの輝かしさでニッコリ笑った。
「ゆっくり、俺にだけ、慣れてね。スズちゃん」
いや、あの、もうあの。
「……せ、」
キャパオーバーです。
無理。
「せんぱぁい……」
「あーはいはい、累そこまで。ホラ手ェ放しな、あと三秒で泣くよその子。リンはこっちおいで」
「せんぱぁい~……」
え、泣いちゃうの!?
……と累さんが怯んだ隙に、ふらふら両手を広げる先輩のとこまで避難する。
「もう無理ぃ~……」
ぼふん、と豊かなお胸に飛び込む。先輩は頭の上でわはは、と笑った。
「アンタそれで、今までよく社会人やってこられたねぇ」
「黙ってデスクで詰まれた伝票入力するのが仕事です~……ほとんど個人プレーです~……」
「なるほど、狙ってそこ行ったな?」
「だってヤだもんニンゲンこわいもん」
「怖くないって。あんたのそれ、ホントどっから来てるんだろうね」
よしよし、と先輩は抱きついたわたしの頭をぐりぐり撫でた。うう、お胸ぽわぽわで最高に暖かいです先輩。すき。
「で、いつまでその皿握ってんの?」
ハッ!
「そうだおかわり!」
「そうそう。悪いね。焼いてきてやってよ」
「喜んで!!」
そうだよわたしの羞恥心より推しの空腹!
シャキっと立ち直ってキッチンに飛び込んだわたしのうしろで、クックック、と押し殺したような笑い声がする。
「喜んで、作っちゃうんだ……」
ちら、と目だけで振り返ると、先輩と累さんは肩を寄せて何やら笑っていた。さすがに、話している内容までは聞こえてこない。
ホント仲良いなこの姉弟、と思いながらトースターにバゲットを入れる。
グラタンふつふつとろーりチーズが焦げるまで、とスタートのボタンを押したわたしには、だから姉と弟がどんな会話をしてるかなんて少しも気付ける筈なく。
「で、落とす気なの。もう最初っから好きでしょ、あの子のこと」
「好きだけど、人聞きが悪いな。違うよ。懇願するんだよ、振り向いて欲しいってね」
「ふ~ん……」
「甘やかして、だいじにだいじにするんだ。あんな可愛い子、指咥えて黙ってなんて見ていられないでしょ」
「そ。泣かせたら許さないからね」
「嬉し泣きはノーカン」
「そこまでさせられるかどうか、やってみな」
不穏なその企みを、知ることなんてできなかったのだ。