クローバー
そんな事生徒達はつゆ知らず、ベラベラ喋っている。
隆二さんのこめかみがピクピク動いてる。あれ絶対イライラしてるよ。隆二さん暑いの苦手だから尚更イライラするんだろうけど、押さえて。
ここでキレたら隆二さんの真面目で弱そうなキャラ設定が崩れちゃうよ。
しかし、そんな私の願いは届かず…
「うるせぇ…」
周りに聞こえるか聞こえないかくらいのそれはそれは低い声がマイクを通して聞こえてきた。
「えー?なに?聞こえないんですけど。もっと大きな声で話してくれますー?」
いつもは雑魚キャラな雰囲気を醸し出している教師の強気な発言に生徒たちが馬鹿にしたように言う。
ブチッ。やばい、今聞こえちゃいけない音が聞こえたよ。
「うるせえって言ってるのが聞こえないのかこのクソガキども!!!!」
校庭中に一人の男のそれはそれは迫力のある怒声が響き渡った。
いつもの眼鏡先生のキャラなら絶対出せないような迫力と殺気にその場が静まる。
さっきまで威勢のよかった生徒たちもポカーンと口を開けて動けなくなっている。一番前で聞いてた男子なんてあまりの迫力に腰ぬかしちゃってるよ。
あーあ、やちゃった。
静まり返った校庭を見て隆二さんははっと我に返ったのか、私の方を見て助けを求めてくる。
いや無理です。
私は巻き込まれまいと隆二さんの目から顔を背ける。
すみません隆二さん。自業自得です。
私からの助けを諦めた隆二さんはゴホンとわざとらしい咳払いを一つして何事もなっかたかのように話を続ける。
いや、それは流石に無理があるよ。
「それではルールに従って鬼ごっこを始めてください。くれぐれも怪我のないように気おつけて。スタート!」
体育祭後、眼鏡先生を怒らすなという暗黙のルールが出来たことは言うまでもない。