クローバー
「うわぁー!助けてくれー!」
「キャー!いやー!来ないで!!!」
勘違いしないで欲しい。決してゾンビ映画の撮影なのでは無い。これは紛れもなくただの"鬼ごっこ"だ。
「すいません先輩。ハチマキ、いただきます。」
目の前で必死に逃げる先輩たちの横を駆け抜け、頭から青のハチマキを手早く奪っていく。
「なんだよあの1年速すぎんだろ!!!」
当たり前だ。ゴリ先に鍛えられた私の足を舐めんなよ?
普段ならこんなに本気にならないんだけど、今回は奏多とどっちが勝つか勝負してるからそういう訳にはいかない。
今、1年が僅差で2年に負けている。この鬼ごっこで勝つしかない。
1年なのによく先輩の点数にここまで追いついたもんだ。
多分最後の体育祭になる3年に、花を持たせてあげるため学年事に競わせて、1番体力のある3年が必然的に優勝するようなってるんだと思うけど
どうやら今年の1、2年は遠慮というものが無いらしい。
3年と点数の差が開きすぎてもはや1、2年の対決である。
あ、目の前に青発見。ハチマキを奪い取ろうと走り出そうとした時…
ドスンッ!ドスンッ!ドスンッ!
何この地響き?!
思わず後ろを振り返る。
190cmはあるんじゃないかという身長にがっちりとした筋肉を蓄えた柔道部にでも入っていそうな男と、小柄で頬骨が見えるんじゃないかというほどの痩せている女が立っていた。
なんなんだあのデコボココンビ。
よく見ると男は緑色のハチマキを女は青色のハチマキを巻いている。
「骨皮あいつか?」
男がそう聞くやいなや、女の方が腰をくねくねさせて男に甘えたように言う。
「うん、郷田さん。あの女です。如月兄弟に媚びを売って取り入って、挙句の果てにはそれを逆手にとって体育祭で2年を蹴落とすって私を脅したの。骨皮怖い。」
ごめん、私はあんたが怖い。目の前で一体何を見せられているんだ?
にしても、そんな事言った女がいるのか?女ってやっぱ怖い。
少し興味が湧いてどこだとこだとその女を探す。
しかし、骨皮と呼ばれる女が勢いよく指さしたのは
「私?!?!?!」