クローバー
「了解です。でも、なんでここに薬物が残って.......」
袋の横に、さっき岡山が置いたであろう金と、メモのような紙が。
恐らく、このメモに日にちと量を書いておき、密売人がそれを読んで持って来るのだろう。
ここに、証拠である薬物を長時間残さないために。
でも、それでは何故今ここに薬物が残っているのだろうか?
「あー。ここで薬物を取引してるのは岡山だけじゃね。同じクラスの松坂もだ。そいつのメモに書かれている量を書き換えて、俺たちの証拠分多く持ってきて貰ったわけよ。」
「え?でも、お金は.......?」
「あ?岡山の金の上に多く積んどけ。合計金額があっときゃバレねぇだろ。」
「なるほど。隆二さんもたまにはやるんですね。」
ペチッ。いたっ!
「たまには、余計だ。」
「もう。すぐ手が出るんだから。」
チョップされた頭を撫でる。
手加減てものを学んで欲しい。
「あとは、現行犯で捕まえればいいが.......」
「問題は誰がここに、薬物を運んで来てるか、ですよね?」
「あぁ。文乃、岡山の次の日付の日ここに張り込むぞ。それと、俺もなるべく目を離さないようにするが、お前も岡山と松坂から目を離さないよう気を配っといてくれ。」
「了解です。あ、それと.......」
いや、まだ決まった訳じゃない。はっきりとタトゥーが見えたわけでもないし、
「ん?どした。」
「いえ、勘違いでした。」
隆二さんが探るような目でこちらを見てくるが、私は固く口を閉じる。
隆二さんは、はぁーと諦めたようにため息を吐く。
「文乃。お前は無理をし過ぎるからな。溜め込まず何かあったらすぐ言えよ。」
私何て.......まだまだ。
もっと、もっと、頑張らなければ
もっと、もっと、無理をしなければ
あいつのためにも
フワッ
不意に背中に腕が回り抱きしめられる。
「ばーか。ガキが無理すること考えてんじゃねーよ。お前はただ、笑っとけ」
ポンポン。心地いいリズム。
あの人の腕の中にいるようで、安心する。
隆二さん。貴方はいつだって私の心を読んで私をを甘やかしてくれる。
気が緩んでしまいそうで、怖くて、
「もういいです。」
腕に力を入れて、突き放す。
「そうか?甘えたくなったらいつでもこい。この胸お前ためだったらいつでも貸してやるよ。」
「うっ。隆二さんの胸は固くて抱き心地がよくないので遠慮します。」
恥ずかしくて、思わず憎まれ口をたたいてしまう。
「そうか?
俺は文乃、柔らかくて好きだぞ?」
「なっ?!変態!!」
「クククッ。変態上等。」
よしっ!じゃあ松坂が来る前にさっさと、帰るか!その言葉を最後に、私たちは旧校舎を後にした。