クローバー
2人ですき焼きを食べていると、リビングのドアが開く音がした。
「「あ……。」」
私と "入って来た人物"奏多さんと、お互い目が合いハモる。
瑠衣は慣れているのか、黙々とすき焼きを食べ、奏多さんに見向きもしない。
「アハハ。2人とも美味しそうなもの食べてるね」
「そういう、奏多さんは傷だらけですね」
奏多さんは、どこか疲れたような声を出し、顔や体には殴られたような無数の傷がある。
「ちょっとヘマしちゃってね」
声は笑っているのに、瞳は笑っていない奏多さん。瞳の向こうに誰を思い浮かべているのか、人、1人殺せそうだ。
奏多さんはソファに座り、自分の手当てをする。
あっ、そうやって包帯を巻いたら取れてしまう。
あっ、まだそこ消毒してない。
奏多さんは不器用なのか、傷の手当てに慣れてないのか、見ているこっちが思わず手を出してしまいそうになる。
「貸して下さい。」
「え…。」
テキパキと手当をしていく。
「はい、終わりです。とはいえ応急処置に過ぎないので酷いところは病院に行って下さいね。」
「……。」
返事かない事を不審に思い顔を上げる。
「……。」
や、やってしまったっっー!ダメだ、見ていてもどかしくて、無意識のうちに手を伸ばしてしまった……
これだから、あいつらにお節介て言われるんだよな。今身に染みてわかった。
「…ありがとう。助かったよ。」
声が聞こえ、奏多さんの顔を見る。いつもの胡散臭い笑顔を浮かべている。
その笑顔はいつも以上に酷い笑顔で、思わず口に出してしまった。