クローバー
「不細工ですね。」
奏多さんの目がこれでもかというほど大きくひらく。
「そんな笑顔向けられるくらいなら、無表情の方がまだマシです。」
「君に何がわかるの……?家族になってたった何週間の赤の他人の君に!!!」
「奏多!!!!!!」
私のために怒ってくれる瑠衣を腕を出しこれ以上出るなと制す。
ありがとう、でもこれは私と奏多さんの問題だ。
「確かに。私は奏多さんの事何にも知りませ。はっきり言って興味もありません。そんな私に何言われてもふざけんなって感じだと思います。ただ、1つ言わせて下さい。そんな笑顔を浮かべて自分隠したって何も意味ありませんよ? 」
そう。何の意味もない…
私はそうやって自分を隠し、溜め込んで壊れた人を知っている。
「じゃあ、どうしろって言うの?皆俺の素の姿を見たらがっかりして逃げていく。最初はそんなヤツらどうだっていいと思ってた。でもっっ!!!1人はやっぱり寂しい。辛い。おれはっっ…。俺はっっ…!笑顔を浮かべて、自分殺して生きていく方法しか知らねぇんだよ!!!」
はぁ、はぁという呼吸音が聞こえてくる。
聞いているこっちの胸が苦しくなるような声だった。
きっと、これが奏多さんの本音なんだ。
寂しがり屋で、嫌われる事が怖い奏多さんの本音。
ゆっくりと奏多さんの頬に手を伸ばし、傷が痛まないよう優しく撫でる。
ビクッ。
奏多さんの肩が大きく揺れる。
「言えたじゃないですか、本音。」
「え……?」
「ずっと、とは言いません。自分を偽るのはきっと奏多さんが自分自身を守るために必要なことだから。でも、たまにはこうやって本音吐き出してみて下さい。そうしないと疲れちゃうでしょ?少なくともここに奏多さんの本音を聞いても奏多さんから逃げない人は2人いますから。ね?」
瑠衣にも目で、だよねと合図を送る。
瑠衣は渋々頷く。嫌そうな顔してても一応兄弟なんだな。目に心配の色が出てる。
やってる事と、思ってる事が違う瑠衣に思わず笑いそうになる。