クローバー

鍋を食べながら明日の事を思いだす。
忘れるとこだった。


「瑠衣。明日私、夜居ないから夕飯作り置きしておくね。」


「文、明日帰ってこないの…?」


瑠衣が心配そうな瞳でこっちを見てくる。
随分と親しくなってしまったものだな。


それって瑠衣に関係ある?と思ってしまった私は相当性格が悪い。


「知り合いと、夕飯食べて来るだけだから、家には帰ってくるよ。」


「そっか。気をつけてね。」


「うん。ありがとうっ!」


瑠衣のフワッとした笑顔にホンワカしていると


「ねぇー。何2人して甘い雰囲気出してんの?てか、毎日瑠衣にご飯作ってるわけ?」


「甘い雰囲気って…。」


「いや、どっからどう見てもそういう雰囲気にしか見えなかった。で、どうなの?」


ムスッと不機嫌そうな顔をして聞いてくる奏多さん。


「うん、作ってるよ。ね?瑠衣。」


「文のご飯……毎日美味しい。」


「ふふふ。良かった。」


バンッ
な、何?!


奏多さんが思いっきり机を叩いて、立ち上がった。


「俺のは?!」


「え?」


「だから、俺の分は?!」


「えっと…、奏多さんの分も今目の前に…、3人でも十分足りる量かと…」


「そうじゃない!俺にも毎日作ってくれてもいいよって言ってんの!」


ポカーン


私と瑠衣の顔は、まさにこの効果音がピッタリというような、間抜けな顔をしている。


奏多さんは照れ隠しなのか、フイっと顔を逸らしボフッと音がなりそうなほど勢いよく座った。


「「…ク…ク、アハハ!!アハハ!!」」


最初は耐えようと頑張ったけど、無理だった。私と瑠衣は子供のようにこれでもかと言うほど笑った。


だって、あのプライドの高そうな奏多さんがまさか私に頼みこんでくるなんて、それもなんかツンデレっぽいし。おかしくってたまらない。


「ねぇー。それ以上笑ったら2人とも埋めるよ?」


まあー。その後奏多さんの笑顔と目が本気すぎて、すぐに笑いなんて引っ込んだけど…


あれは、うん。怖かった。


「分かった。奏多さんのも作っておくね」


この人はきっと、こうやって人に何か頼むのが苦手なんだろうな。


奏多さんが頑張って私に言ってきてくれた事が何だか嬉しかった。


「…ありがと。それと、さっき奏多って呼べっていったよね。」


あー。あれってそういう意味だったのか。


「分かったよ。奏多。」


ふふふ。今日は久しぶりに心から笑ったな







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