クローバー
嫌われる勇気
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それは、体育祭の前日。
金曜日の出来事。
今日は早く学校が終わったから、なにか凝った物を作ろうかなー。
家のソファーに座って、窓の外のどこまでも広がる青い空を見ながら考える。
この家には、私1人。
まだ誰も帰って来ていない。
シーンとした家の中ボーッと考えていると
ガチャ
玄関の開く音がした。
自然と音のする方へ目を向ける。リビングに入って来た人物と目が合った。
その人物はどこか疲れたような表情をしてしいる。まるで、この間のように。いやそれ以上に弱っているように感じられる。
「っ!文乃いたんだ。静かだったから誰も居ないと思ってた。てかホントに女子高生?こんな早く帰って来ないで、友達と遊びに行ったりしなよ。あ、友達居ないかんじ?」
「奏多。」
「まー、文乃あんまり愛想無いし友達とかいなさそう。どこかツンケンしてるし、初めて会った時も態度悪かったしね。」
「奏多。」
「俺みたいに、ニコニコして周りに合わせて生きてる方がきっと生きやすいのに。ホント、文乃みたいに自分持って生きてる奴は…」
「奏多っ!」
パチッ!
両手で奏多の頬を挟み、無理やり話しを辞めさせる。
奏多の目が大きく開いていく。
「奏多。どうしたの?」
奏多の弱った目が、私の目を見る。
そして、ゆっくりと頬にある私の手に触れる。
「ごめん文乃。俺…。」
そこには、いつもの憎たらしい程の余裕はない。
奏多の頭に手を回し、勢いよく私の肩へもってくる。急な事に奏多は対応しきれず、されるがまま。
「えっ…」
「無理に話さなくていい。」
優しく奏多の頭を撫でる。
「っっ!」
「私は何にも見えないし、聞こえない。」
奏多は私の肩に顔をつけたまま、背中に手を回しゆっくりと力を込める。
何分、何十分、そうしていたのだろうか。