クローバー
奏多は私を抱きしめたまま、話し始めた。
「これは俺の独り言なんだけど、俺には大切な仲間がいるんだよ。どんな事にも真っ直ぐで、人を疑う事を知らないバカ。口が悪くてよく誤解されがちだけど、誰よりも優しい不器用なやつ。いつも、自分の事を後回しにして、仲間にお節介を焼く母親みたいになやつ。それと…。」
「憎まれ口を叩くけど、誰よりも仲間思いな奏多。そうでしょ?」
奏多は照れくさいのか早口にいう。
「何それっっ。憎まれ口は余計なんだけど。」
そういう奏多は、仲間の事を思いだしながらどこか嬉しそうに、そして寂しそうにかたる。
「…あいつらは俺の大切な居場所で、何が何でも守りたかった。それだけなんだ…。
なのにっっ…。もう、ダメみたいだ。俺の話しはもうあいつの耳には届かないっ。」
私の肩に顔を押し付けているので奏多の顔は見えないが、聞いているこっちが泣きそうになる、そんな声。
グイッ
奏多の顔に両手を添え無理やりあげさせる。涙は流れていないものの、目は痛い痛いと泣いている。
そんな奏多に私は慰めるでもなく
奏多の頬にある両手に思いっきり力をこめて、挟んだ。
そう、もう一度言おう。挟んだのである。
それはもう、潰れちゃうんじゃないかってくらい。その奏汰の顔が面白かった事は内緒だ。絶対に殺されるから。
「はっ?!ちょっ、痛い痛い痛い!!」
当たり前だが、奏多は暴れて逃げようとするため私も離すまいと負けじと力を入れる。
私が奏多の頬から手が離れた頃にはお互いはぁ、はぁ、と走った後みたいになっていた。
あらら、奏多頬赤くなってる。
やったのはお前だけどなという声が聞こえた気がするが無視だ無視。所詮私は他人事である。
「何するんだよ!!てか、力強すぎ!顔潰れるかと思ったんだけど!!」
赤くなった頬を手でさすりながら、ブツブツ文句を言う奏多。