クローバー
「今日は満月だね。」
女がポツリと呟く。
「あぁ、そういえばそうだな。」
言われるまで気づかなかった。俺も女と同じように空を見上げる。
空にはまんまると綺麗な金色の満月が浮かんでいる。
チラリと、女の方をみる。女はどこか悲しげにその満月を見ていた。
バカな俺にはその顔の理由は分からない。
2人の間にはただ、風の音だけが響く。
………
……
はっ!満月見に来たんじゃねぇ!!!
俺は女の方を見て、思いっきり頭を下げる
「あ、あのさ。文乃だっけ?さっきは…
怒鳴ってごめん!!そしてありがと!!」
時間にして10秒。
なんにも文乃からは返ってこない。
ゆっくりと頭を上げると、目をパチパチと瞬きし、驚いている姿があった。
「ふっ、ふふふ。わざわざそんな事言いに来たんだっ。」
おかしいと笑う文乃。
何故かその笑い顔を見て、心が踊る。
笑った!
「別に、私が勝手にやったことだから謝らなくていいのに。まー、でも、どういたしまして。」
「おう!」
俺も二カッと笑う。
「ねぇ、流星。お前は強いね。」
文乃はそんな笑顔の俺を見て呟く。
「俺がか?俺は強くなんてねぇよ。りかを失う事が怖くて、真実と向き合う事から逃げて、仲間を傷つけた弱い男だ。」
「いいや。お前は強いよ。だって、最後にはちゃんと逃げずに向き合った。それは、なかなか出来ることじゃないよ。」
その言葉に泣きそうになるのを唇を噛んでぐっとこらえる。
「俺っ…頑張った?」
「あぁ。よく頑張った」
俺の頭を優しく、文乃が撫でてくれる。
耐えていた、涙が零れ落ちる。
「流星、お前はよく泣くね。泣き虫か!」
「ちげぇよ!今日は…、ちょっと…涙腺が壊れてるだけだ!!」