クローバー
相棒
火蓮の倉庫から15分。
空はすっかり暗闇に包まれ、街は煌びやかなネオンの光に包まれる。
騒がしい夜の街を横目にバイクで車の隙間をすいすいと通り抜ける。4月の夜はまだ少し肌寒く、バイクに乗っていると尚更風を感じ、体が冷えていく。
後ろの奏多は私の腰に手を巻きつけて、じっと私の背中に身を預ける。2人が触れ合っている部分だけが妙に暖かい。
寒い.......。早く帰らないと、風邪ひくな。
違反にならない程度に家まで急ぐ。
4月の夜はこんなにも寒かったかな。
こいつに乗るのが久しぶり過ぎて忘れていた。
『文乃。いいモノ買って来てやったぞ。』
帰って来て早々、私の顔を見てニヤニヤする男。嫌な予感しかしない。
『また?!お前の買って来るものは大抵いいモノじゃない。寧ろ無駄遣い。』
こいつは買い物に行く度何かしら買ってきて家の中をガラクタで埋めている。玄関に置かれてているドデカい自由の女神の像のオブジェがいい例だ。
邪魔でしょうがない。
『失礼なやつだなー。俺のセンスが分からないなんて、お前もまだまだだな。』
なーにが、俺のセンスだ。そんなもの分かってたまるか。
でもここで本音を言うとこいつが面倒くさいので、適当に受け流す。
『ハイハイ。で?買って来たものって?』
『ぐふふふっっ!文乃目閉じろ。』
気持ち悪い笑い方に若干引いている私を無視してそいつは私の目を手で覆う。
『ちょっ、どこ行くの!!』
『いいから、いいから。』
私の目を手で覆ったまま、そいつは私をぐいぐいとどこかへと誘導する。
『そこ段差あるから気をつけろ』
『うおっ、お前一体どこに?』
私の話しを無視してどんどん前に進んでいく。ドアの開く音とともに、顔に風が当たる。外の空気が私を包む。