クローバー
私はそいつを引っ張り人気のない所へと連れていく。
そしてそいつを壁に押しやり睨みあげる。
いわゆる壁ドンだ。こいつすぐ逃げるからな。
「珍しく積極的だね、クロさん。」
ニヤニヤしながら私を見てくるこいつ。
「で?なんでいるんだよ"月夜"」
「あれ?クロさん怒ってる?」
「あぁ、怒ってる。てかここではクロさんって呼ばないで。」
「ごめんって文乃さん。文乃さんの体操服姿が見たかったたんだよー。許して。」
私の腰に手をまきつけ、甘えたような声を出してくる月夜。こうすれば許して貰えるって分かってるからだ。
でも今日は許さない。
「俺がいたから借り物競争ゴール出来たんだしね?」
「いやだ…。」
覗き込んでくる月夜の顔と反対方向に顔をプイッと向ける。
「今度文乃さんが好きないちごのショート奢るから。ね?」
「……2個。」
月夜はその言葉に目をパチパチさせ、嬉しそうに笑った。
「いいよ。2個でも、3個でも買ってあげる。」
しょうがない。今日はこれで許してあげよう。
「てか月夜はいつから居たの?」
「え?初めからだけど?」
「初めから?!」
「そうだよ。だから、文乃さんがあの兄弟にサンドイッチされてるのも見てたし、変な金髪とじゃれ合ってるのも見てたし、瑠衣とかいうやつに膝枕してるのも見た。」
後半になるにつれて笑顔がどんどん黒くなっていく月夜。