クローバー
「ぐぇっ」
いきなり横から腕を捕まれ体勢が崩れ、色気もクソない声がもれてしまう。月夜が見せつけるように私の肩を抱いた。
いきなりの事で私の顔は月夜の肩に押し付けるように頬が歪んで面白い顔になっていることだろう。
こいつ、さっきから私の扱いが雑過ぎないか?上を向いてギロリと月夜を睨む。
そんな事お構いなしに月夜が言う。
「さっきの借り物競争見てなかったの?だったらもう一度教えてあげる。俺は文乃さんにとって"大切な人"だよ。」
3人の大きな瞳が更に大きくなっていていくのが分かる。
「クククッ、いいねその顔。最高。」
「ばかっ、月夜!!」
「なに?事実でしょ?」
そうだけどそうじゃない!!話をややこしくするな!!もっとこうなんか、誤魔化し方があったでしょ?!
今までのやり返しとばかりに月夜の足を思いっきり踏んでやる。
「いっっった!!!」
後ろで足を押え悶え苦しんでいる奴は無視だ無視。
「あ、あのね、こいつはそんいうのじゃないから!」
急いで取り繕う。そういうのってどういうのだよ?!あーもう!月夜のバカ!!大体なんで体育祭なんかに来るの!怪しまれるでしょ!!
「大切な人って、その腹立つ最低野郎はあんたの彼氏ってこと?」
うわーお、奏多いつもの王子様キャラが完全に崩れてるよ。それどころかいつも以上に口が悪い。
眉間に皺を寄せイライラしたように、でも少し不安そうな顔で奏多が聞いてくる。
「違う!!絶対に違うから。月夜が彼氏とか絶対に嫌。」
今度は私が眉間に皺を寄せ、顔をブンブンと横に振って否定する。
え、こいつが彼氏とか絶対に嫌なんですけど。こんな顔は可愛いのに中身真っ暗で、人を煽る事だけに関しては一流の男なんて絶対に嫌。
なぜかその答えにホッとしたような顔をする奏多と瑠衣。
そして、いつの間にか復活した月夜が不貞腐たようにブーブー文句を垂れているが、そんな事は知らん。自業自得だ。
「じゃあふーちゃんと月夜って人はどういう関係なのー?」
今までのやり取りを黙って見ていた悠斗さんが首をコテッとさせて可愛らしく聞いてくる。とてつもない破壊力。めちゃくちゃ可愛い。
「えっと…、それはー…」
「秘密だよ。」
そう言うのと同時にチュッとリップ音が響いた。耳元で色気のある声が聞こえてくる。
「さっきのお返し」