クローバー
月夜は固まっている奏多達を見て満足したのか、じゃーねーとヒラヒラと手を振って帰って行った。
シーン
静まり帰ったこの場には、夏にしては涼しい風で草木が揺れる音、そして体育祭で盛り上がっている楽しそうな生徒の声だけが聞こえてくる。
いや、じゃーねじゃないよ!!この後始末どうんすんの!
戻ってこーい、元凶!!!
月夜を追いかけようとして後ろを振り向いたが、あいつはもう居ない。歩くのはやっ!!
目の前には固まっている義兄弟達。
なんかもうめんどくさい。いっそ私も逃げてしまおうか。そろりそろりと足音をたてず、固まっている3人の前から居なくなろうと思ったら…
ズンズンと足音を立てながら猛烈な速さで我に返った奏多がこちらにやって来る。
走ってるのか歩いてるのか分からないが、そのもの凄い迫力に思わず足を止めて縮こまってしまう。
「え、ちょ、待って奏多!!」
そして、私の目の前までやって来て頬を思い切っりシャツで拭いた。それはもう思いっきり。
「いたっ、痛いよ奏多!頬がっ、頬がなくなる!!」
まじで痛い、血が出るんじゃないかってほど容赦なくゴシゴシと拭いてくる
「無くなったら新しいのつけてあげるから安心して。」
新しいのってなに?!私はアンパンマンか何かなのか?!
瑠衣も瑠衣で奏多が動きだして我に返ったのか、私の方にやって来て頬を思いっきりつねる。
「い、いひゃい。」
痛くて涙目になりながら、何するんだと思いっきり瑠衣を睨む。
「む、そんな可愛い顔してもダメ。俺言ったよね他の男に近づくなって。」
「いや、あれは不可抗力というか」
「違う、文乃が可愛いのが悪い。お仕置決定だね。」
可愛いのが悪いってなに?!てか、今回ばかりは私は何も悪くない。むしろ私はあんたらと月夜の被害者なんですけど。
楽しみだねとニコッと笑った瑠衣に、私は恐怖を覚えた。
神様どうかいつもの可愛いくて眠そうな瑠衣を返してください。
そして今度月夜に会った時、あいつ絶対にボコボコにする。