背伸びしても届かない〜恋を知った僕は、君の心に堕ちていく〜
* * * *

「なぁ柴田、金曜日のあれって何?」

 翌月曜日の朝一番に、尚政は柴田に詰め寄った。明らかに何らかの意図があることは分かっている。

「何って、分かってるんじゃないの?」

 柴田は次の授業の準備をしながら、不敵な笑みを浮かべる。

「一花ちゃん、体育祭の時にお前に医務室でお世話になったらしいぞ。覚えてないのか?」

 柴田に言われ、尚政はしばらく考え込む。何人か傷の手当てはした。その中にいたってことか? 

 その時に、下を向いたまま動けなくなっていた三つ編みの女の子が頭に浮かぶ。

「……あぁ、あの転んだ子か!」
「一花ちゃんが何かを望んだわじゃなくて、俺と園部がお節介をしただけだよ。あの子を見てると何かしてあげたくなっちゃうんだよなぁ」
「……確かに良い子だよな。でも中学生だし」

 年齢的に恋愛対象としてみるのはどうなのだろうか。

「お前が初めて彼女作ったのだって中二だったよな。きっとあのことをまだ引きずっているんだろうけどさ、一度一花ちゃんと話してみたら? 気持ちが変化するかもよ」

 その時、始業の鐘が鳴る。尚政は渋々席に戻ろうとする。

「そうだ。一花ちゃんが早速生チョコ作ってきたって。渡したいらしいんだけど、昼休みと放課後どっちがいい?」

 柴田の声は浮き足立っているようにも聞こえる。

 尚政はため息をついてから答える。

「……昼休みに行くよ。何組?」
「二年一組」
「了解」
< 11 / 136 >

この作品をシェア

pagetop