背伸びしても届かない〜恋を知った僕は、君の心に堕ちていく〜

* * * *

 卒業式までは登校しないと宣言していた通り、智絵里は一度も学校に姿を現さなかった。

 ただ卒業式当日は篠田が張り付いてくれたおかげか、普段通りの智絵里が見られて一花はホッとする。

「一花〜、ちょっと連絡しなかったからって、お母さんが口うるさいんだけど……」
「お前、こっちはずっと心配してたんだぞ! っていうか、なんでそんなに痩せ細ってんだよ。ちゃんと食べてるのか⁈」
「食べてるわよ! 普通痩せたら『キレイになったね〜』とか言うんじゃないの⁈」
「キレイにも限度がある。お前のは色気も何も感じない」
「あんたに色気出してどうすんのさ。考えただけで鳥肌立つんですけど」
「ま、まぁまぁ二人とも……」

 一花は間に入るものの、二人が楽しそうなことに気付く。あぁ、きっとこれが二人のペースなのね。智絵里も、私の前じゃこんなはっきり言わないもの。一花は友達の新たな一面を知れたことが嬉しかった。

 帰りはそれぞれ親が来ていたため、また春休みに会おうと話して別れる。

 校門を出る前に、駐輪場の前を通った。あの頃のキラキラした気持ちが蘇り、後ろ髪を引かれる。先輩と出会えたこの学校での生活は、私にとってかけがえのない大切な思い出だった。

 海鵬での生活もこれで終わりと思うと寂しい。でもこれでまた一つ先輩に近づけると思えば、前を向いていける気がした。

 
< 111 / 136 >

この作品をシェア

pagetop