背伸びしても届かない〜恋を知った僕は、君の心に堕ちていく〜
初めての夜
 一花は気持ちを切り替えるために笑顔を作ると、尚政の腕に掴まる。尚政は驚いたように一花を見た。

 今の時刻は午後三時。時間があるのかないのか微妙だったが、尚政とのわだかまりを解くためにも、楽しい時間を過ごしたいと思った。

「まだ時間あるし、久しぶりにデートしようよ。今日を良い思い出にしたいもの」

 一花は尚政を促すように歩き始める。

「まずはパンケーキ食べるでしょ。ゲーセンで後向前太郎のグッズを獲ってもらって、今年の指輪も買ってもらわなきゃ!」

 一花がいつもの様子に戻ったことに、尚政は少し困惑した。あんなことを言ったのに、普通に接してくれる一花に申し訳ない気持ちになった。
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