背伸びしても届かない〜恋を知った僕は、君の心に堕ちていく〜
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日曜日は朝からずっとソワソワしていた。
六月の梅雨時期のため天候を心配していたが、気持ちの良いほどの晴天となった。
公園の入り口に十時に待ち合わせ。
デートじゃないとは思いつつも、少しでもかわいいと思われたくて、初めてファッション雑誌を買ってみた。でもどれが自分に合うのかわからず、お手上げ状態だった。
とりあえず芽美と智絵里からアドバイスを受けて、それに近い服を家で探したり、母親におねだりして買ってもらったりした。
こういう時に上にきょうだいがいたら違うんだろうな……。妹しかいない一花は肩を落とす。
見た目はプリーツのスカートだが、中がショートパンツのようになったボトムスに、肩にフリルのついたピンクのTシャツを合わせ、カバンは合皮のリュックを選んだ。中には飲み物やタオルを詰め込んでいく。
バスケを教えてもらうんだし、髪は一つにまとめた。
スニーカーを履いて家を出る頃には、精神的にクタクタだった。
待ち合わせ場所に着いても、この服が正解かわからなかったし、何より尚政の反応を想像しただけで不安になる。
自分から言ったことなのに、緊張でおかしくなりそうだった。
一分もたたないうちに、何度も腕時計を確認してしまう。こんなに時間が長く感じるなんて、今まで経験したことがない。
「一花ちゃん? びっくりした。もう着いてたんだ」
声のした方を向くと、白いTシャツにデニム姿の尚政が自転車に乗ったまま立っていた。カゴにはバスケットボールを持っている。
わぁ……すごく似合ってる。初めて見る尚政の私服に、一花はまたドキドキしてしまう。
「俺の方が早く着いたと思ったのになぁ」
「お、お待たせするわけにはいかないと思って……」
「いやいや、女の子だし、時間ぴったりくらいでいいと思うけどね」
「そうなんですか?」
「あとは彼氏を待ちたいか、待たせたいか。一花ちゃんはどっちタイプ?」
「……待ちたいです」
「あはは! 確かにそんな感じする」
尚政は自転車を降り、遊歩道に沿って歩き出す。一花も追いかけるようについていく。
今もまだドキドキしてるけど、今の会話で少しだけリラックス出来た。