背伸びしても届かない〜恋を知った僕は、君の心に堕ちていく〜
ゲームセンターの中は多くの人で賑わっていた。ただ休日ということもあり、家族連れも多く見られる。
二人は店内を景品を見ながら歩く。すると一台のゲーム機の前で、一花の動きが止まる。
「あっ、先輩! これです! やっぱり新商品が出てたんだ」
「えっ……これ?」
一花が指差したのは、不機嫌そうな侍の絵が描かれた特大のビーズクッションだった。
「後向前太郎っていうんですよ〜。ネガティブだけど、ポジティブっていう謎キャラなんです。嫌々でもとりあえずやってみるっていう姿がかわいいんですよねぇ」
「……へぇ、かわいい……? なんか一花ちゃんの感覚って不思議だ……」
でもこんなグッズになるくらいだし、きっと人気のあるキャラクターなんだろうな。
「じゃあこれ狙ってみる? 取れるか分からないけど、とりあえず頑張ってみようかな」
「なんか今の発言、後向前太郎みたい!」
あぁ、後向きだけど、前向きな発言ってことか。理解して吹き出す。確かに俺っぽいかもな、このキャラクター。
何回も挑戦し、獲れた時には一花は歓声をあげた。
「すごい! クッションって難しいと思うのに……」
「いや、正直もっとかかるかと思った。ちゃんと獲れて良かったよ」
景品を取り出し口から引き抜くと、尚政は一花に渡す。
「はい、プレゼント」
「いいんですか?」
「まぁ俺が持ってても仕方ないしね。初デート記念かな?」
「……嬉しいです。大事にしますね。ありがとうございます。家宝にします」
「家宝はちょっと言い過ぎだけどね、喜んでもらえたなら良かった」
一花は受け取ったクッションをぎゅっと抱きしめた。嬉しくてにやけてしまう顔を隠すように……。
* * * *
それから二人は街を散策し、あっという間に夕方になってしまった。
家のそばまで送ってもらうことになった一花は、尚政の隣を歩きながら一抹の不安がよぎる。
もしこれで先輩との関係がおしまいって言われたらどうしよう……。ただの後輩でいいから、こうやって普通に話せる距離にいたい。今日一緒に過ごして、その想いが一層強くなった。
そこの角を曲がれば、家まであと少し……。
「せ、先輩!」
一花は我慢出来ずに声を出す。
「ん? どうしたの?」
「あの……」
そこまで言って、一花は言葉が出なくなってしまう。告白しなかったのは私の意思、だけどこの先も会いたいということには先輩の意思が必要になる。拒絶されればそれで終わりだ。
でもやっぱり会いたい。
「あの……この先も……先輩とこういう関係でいたいって言ったら……迷惑でしょうか?」
言い終えて目を閉じた一花の頭を、尚政の手が優しく撫でた。
「一花ちゃん、自信つけたら告白してくれるんでしょ? だったらこういう関係でいた方がいいんじゃない?」
「あ、ありがとうございます! すごく嬉しい……」
「また調理部でお菓子を作る時は呼んで。食べさせてくれるでしょ?」
「もちろんです!」
通りの角まで来ると、一花は足を止める。
「ここまでで大丈夫です。今日はありがとうございました。すごく楽しかったです」
「うん、俺も楽しかったよ。ありがとう」
「……先輩、もう一つだけいいですか?」
「何?」
「メールって……したら迷惑?」
クッションに顔を埋めたまま話す一花が、なんだかとてもかわいく感じる。
「いいよ、いつでもして。一花ちゃんは特別」
最後の方は、また一花の反応が見たくてつい付け加えてしまった。
するとまさかの泣き笑いに、尚政は胸をグッと掴まれたような錯覚に陥る。
「良かった……! じゃあ……また学校で」
手を振り走り去っていく一花の後ろ姿から尚政は目が離せなかった。
二人は店内を景品を見ながら歩く。すると一台のゲーム機の前で、一花の動きが止まる。
「あっ、先輩! これです! やっぱり新商品が出てたんだ」
「えっ……これ?」
一花が指差したのは、不機嫌そうな侍の絵が描かれた特大のビーズクッションだった。
「後向前太郎っていうんですよ〜。ネガティブだけど、ポジティブっていう謎キャラなんです。嫌々でもとりあえずやってみるっていう姿がかわいいんですよねぇ」
「……へぇ、かわいい……? なんか一花ちゃんの感覚って不思議だ……」
でもこんなグッズになるくらいだし、きっと人気のあるキャラクターなんだろうな。
「じゃあこれ狙ってみる? 取れるか分からないけど、とりあえず頑張ってみようかな」
「なんか今の発言、後向前太郎みたい!」
あぁ、後向きだけど、前向きな発言ってことか。理解して吹き出す。確かに俺っぽいかもな、このキャラクター。
何回も挑戦し、獲れた時には一花は歓声をあげた。
「すごい! クッションって難しいと思うのに……」
「いや、正直もっとかかるかと思った。ちゃんと獲れて良かったよ」
景品を取り出し口から引き抜くと、尚政は一花に渡す。
「はい、プレゼント」
「いいんですか?」
「まぁ俺が持ってても仕方ないしね。初デート記念かな?」
「……嬉しいです。大事にしますね。ありがとうございます。家宝にします」
「家宝はちょっと言い過ぎだけどね、喜んでもらえたなら良かった」
一花は受け取ったクッションをぎゅっと抱きしめた。嬉しくてにやけてしまう顔を隠すように……。
* * * *
それから二人は街を散策し、あっという間に夕方になってしまった。
家のそばまで送ってもらうことになった一花は、尚政の隣を歩きながら一抹の不安がよぎる。
もしこれで先輩との関係がおしまいって言われたらどうしよう……。ただの後輩でいいから、こうやって普通に話せる距離にいたい。今日一緒に過ごして、その想いが一層強くなった。
そこの角を曲がれば、家まであと少し……。
「せ、先輩!」
一花は我慢出来ずに声を出す。
「ん? どうしたの?」
「あの……」
そこまで言って、一花は言葉が出なくなってしまう。告白しなかったのは私の意思、だけどこの先も会いたいということには先輩の意思が必要になる。拒絶されればそれで終わりだ。
でもやっぱり会いたい。
「あの……この先も……先輩とこういう関係でいたいって言ったら……迷惑でしょうか?」
言い終えて目を閉じた一花の頭を、尚政の手が優しく撫でた。
「一花ちゃん、自信つけたら告白してくれるんでしょ? だったらこういう関係でいた方がいいんじゃない?」
「あ、ありがとうございます! すごく嬉しい……」
「また調理部でお菓子を作る時は呼んで。食べさせてくれるでしょ?」
「もちろんです!」
通りの角まで来ると、一花は足を止める。
「ここまでで大丈夫です。今日はありがとうございました。すごく楽しかったです」
「うん、俺も楽しかったよ。ありがとう」
「……先輩、もう一つだけいいですか?」
「何?」
「メールって……したら迷惑?」
クッションに顔を埋めたまま話す一花が、なんだかとてもかわいく感じる。
「いいよ、いつでもして。一花ちゃんは特別」
最後の方は、また一花の反応が見たくてつい付け加えてしまった。
するとまさかの泣き笑いに、尚政は胸をグッと掴まれたような錯覚に陥る。
「良かった……! じゃあ……また学校で」
手を振り走り去っていく一花の後ろ姿から尚政は目が離せなかった。