背伸びしても届かない〜恋を知った僕は、君の心に堕ちていく〜
一花を見た男子生徒が驚いた顔をする。
「えっ……それって中等部の制服じゃん。何、お前ってそういう趣味だったの?」
「そういう下世話な言い方やめてくれる? 彼女は大事な友達なんだから」
尚政が言うと、今度は女子生徒が近付いてくる。
「この子知ってる。最近尚政にまとわりついてる子でしょ?」
その女子は一花を上から下まで眺めると、
「かわいい」
と少しバカにしたように鼻で笑う。
一花はその視線に耐えられず、下を向いてしまった。
その様子を見て、尚政はため息をつく。じわじわと苦い記憶が蘇ってくる。
なんでこいつらは自分たちが楽しむために、平気で人を傷つけることが言えるんだろう。
「あのさ、たとえ中学生だとしても、れっきとした女性なんだからさ。しかも一花ちゃんは俺にはもったいないくらいの優しくていい子なんだ。ねっ?」
そうしてわざと一花のことを抱きしめた。すると別の男子が驚いたように、尚政と先ほど一花を鼻で笑った女子を交互に見る。
「えっ……だってお前、こいつに未練があるから彼女をつくらなかったんじゃないのか?」
「はぁ? なんでそうなるの? 俺から振ったのに、そんなことあるわけないじゃん」
「えっ……でも……」
「いいからもう行こう!」
先ほどの女子が急に慌て出し、その場を去ろうと友人たちをけしかける。その姿を見て尚政はピンときた。
「あぁ、そっか。俺が振られたことになってるんだ。まぁお前がそれで満足なら別にいいけどさ」
自分の立場を守るために、平気で嘘をつくんだな。昔の嫌な記憶に蓋をするように、一花を抱きしめる腕に力を込める。
女子生徒は去り際に、尚政を睨みつける。それに対して、尚政は冷ややかな目で受け流す。