背伸びしても届かない〜恋を知った僕は、君の心に堕ちていく〜
 自動販売機で飲み物を買うと、近くの公園に入る。尚政に手を引かれ、滑り台の横のベンチに座った。

 一花は一人分の隙間を空けて隣に座る。それを見て尚政は吹き出す。

「せっかくデートだしさ、もう少し近くに座らない?」
「えっ……! でも……」

 なかなか動かない一花に代わり、尚政が一花にピッタリとくっつくように座る。緊張で固まる一花がかわいくて、ついからかいたくなってしまう。

 ただ尚政の中では先ほど嫌な想いをさせてしまった一花に対して、改めて楽しい気持ちになって欲しいという願いと、これから話すことへの自身の緊張を解こうという想いもあった。

 一花の方に腕を回し、
「リラックスね」
と、自分へ言い聞かせる。

 空を仰ぎ、深く息を吐くと、そっと目を閉じた。

「俺ね、中二の二学期にクラスの女子に告白されてさ、初めて付き合ったんだよね。告白されたのも、彼女が出来たのも初めてだったからさ、たぶんいろいろ浮かれてたんだと思う」

 喉がカラカラになり、尚政はペットボトルの蓋を開けて炭酸飲料を口に流し込む。

「でさ、まぁいろいろバカやっちゃったわけですよ」
「たとえば?」

 一花は興味とかではなく、ただの疑問として尚政にぶつけてくる。

 本当はあまり振り返りたくない過去のことだったが、一花への答えを探すために尚政は考える。

 そしてある答えに辿り着く。

「……ごめん。俺、あの時と同じことを一花ちゃんにしてるかも……」

 すると一花が恥ずかしそうに二人がピタリとくっついた部分を指差す。

「こういうことですか?」
「あと手を繋いだり、からかったり」

 ただあの時と違うのはガツガツしてるんじゃなくて、一花ちゃんの反応を見て楽しんでるってことかな。その方がタチ悪いかもしれないけど。

「俺の中では嬉しい気持ちの表れだったんだけど、相手にはそう取られなかったみたいでさ……」

 そこまで話して尚政が黙ってしまった。

「あの……無理しなくても……」
「うん……なんかあの日のことは相当ショックだったんだなって、四年経ってもまだこうだもん……」

 一花にも尚政の苦しみが伝わってくるようだった。私が知りたいなんて言ったから……。

「でも話さなかったから余計に苦しいのかな。誰かと共有出来れば楽になるのかもね」

 尚政は一花に微笑むと、頭を撫でる。
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