背伸びしても届かない〜恋を知った僕は、君の心に堕ちていく〜
* * * *
入ったお店はヨーロッパのアンティーク調の家具やアクセサリーが中心のお店だった。
「こういうの好き?」
「なかなか着ける機会とかはないけど、大人になったらこういうアクセサリーが似合うようになりたいですね」
楽しそうに店内を見て回る一花を見ながら、自分の無神経さにイラッとした。あんなに純粋な子に、俺の価値観を押し付けるべきじゃない。
それに俺が卒業したら、きっともう会うこともなくなる。俺のいない生活を普通に送るんだ。
そんなふうに考えてから、尚政の方が虚しくなった。もうメールも来ない、お菓子ももらえない、こうして会えない……。なんでこんなに寂しく感じるんだ?
「あっ、これかわいいなぁ」
一花がアクセサリーのコーナーで立ち止まる。後ろから覗くと、くすんだゴールドの細身のリングに、キラキラ光るドロップ型の石がついた指輪を眺めていた。
「ちょっとオパールっぽいですよね。すごくキレイ」
ドロップの形が涙の雫のようにも見えた。先ほど泣かせてしまったことを思い出し、尚政は苦しくなった。値段もそんなに高くない。尚政は一花の手からその指輪を抜き取る。
「これ、俺にプレゼントさせてよ」
「えっ……でも……」
「そういえばプレゼント準備してなかったからさ。それとも他のがいい?」
「いえっ! それがいいです……」
レジに持っていき、ラッピングをお願いしようとするが、一花はそれを断る。
「着けて帰りたいので」
店員から指輪を受け取ると、一花は尚政の腕を引いて店の外に出る。
「一花ちゃん?」
「あのっ、指輪ありがとうございます! ただお願いがあって……」
「……俺にはめて欲しいってこと?」
一花は頷く。
「先輩、さっき言ったでしょ? いつでも愛想つかしていいって。でもそれって逆に愛想つかさなければそばにいていいってことだよね?」
「一花ちゃん……」
「だからそれまでは先輩のそばにいたいの……」
尚政は観念したように笑い出す。
「自信つけたら告白するってやつは?」
「……まだないからしない」
「あはは! わかったよ。じゃあしばらくこの関係を続けよう」