背伸びしても届かない〜恋を知った僕は、君の心に堕ちていく〜
尚政は一花の指に指輪をはめようとするが、なかなかサイズが合わない。
「……どうしたら左手の薬指にしかはまらない指輪を選べるの……」
まさかの左手の薬指にだけピタリとハマる。呆れる尚政に対し、一花は嬉しそうに指輪を見つめた。
「先輩、大事するね! ありがとう!」
こんな笑顔を向けられたら、そんなつもりのない尚政だって自然と嬉しくなる。浮かれている一花の手を取った。
「さっ、そろそろ帰るよ。一花」
呼び捨てにされ、一花は顔を真っ赤にした。
「なんて破壊力……嬉しくて死にそう……」
「何それ」
「先輩は私と手を繋ぐのは、嬉しいからじゃないよね?」
「あぁ、さっきの話? そうだね、一花の反応が面白いからからかってる」
一花が怒ったように頬を膨らます。
「でもいいの。私は先輩が手を繋いでくれると、嬉しくて浮かれちゃうの。中坊だもん。これって変じゃないよね?」
尚政は驚いて目を見張る。あぁ、そういうことか。君は中学生の時の俺が普通だって言ってくれてるんだ。
「そうだね……」
まだ前に踏み出すには時間はかかると思うけど、君が俺を肯定してくれることは大きな力になる。
「終わり良ければ全て良しだね! すごく素敵な誕生日になりました! ありがとう」
「どういたしまして」
中二で止まっていた何かが、ようやく動き出すような気持ちになった。