背伸びしても届かない〜恋を知った僕は、君の心に堕ちていく〜

* * * *

『先輩、大学はどうですか? 忙しい?』
『思っていたより忙しいかな。まだ落ち着くまでしばらくかかりそう』

『今日部活でクッキーを焼いたの。近くにいたら渡せるのにな』
『それは残念。また作った時に食べさせて』

『先輩の誕生日、何か欲しいものとかある?』
『一花の生チョコが食べたいけど、たぶん取りに行けないんだ。気持ちだけもらっておくね』

『もうすぐ夏休みだけど、先輩は予定埋まってる?』
『従兄弟の父親のレストランでバイト三昧だよ。頑張って稼がないと!』

 一花は自分の部屋のベッドの上に転がってスマホを眺めていた。

 メールをしても、会話が進まない。というか、会話を止められているようにも感じる。

 あの時、この関係を続けようって言ってくれたのは先輩なのに……。これじゃあどんどん離れてしまう。

「会いたいって言ったら迷惑かな……」

 思わず言葉が口から漏れる。会いたいって言ってくれたら嬉しいのにな。でも好きなのは私の方だし、先輩からそんな言葉を引き出せるはずないよね。

 拒絶されるのが怖い、でも会えないのも苦しい。一体どうすればいいんだろう……。
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