背伸びしても届かない〜恋を知った僕は、君の心に堕ちていく〜
* * * *
尚政は待ち合わせ場所に到着すると、辺りを見回す。一花はまだ到着していないな……そう思った時、改札口の向かいの柱に寄りかかっている彼女を見つけた。しかし尚政はそのまま動けなくなる。
あれって本当に一花だよな……。一年で雰囲気がかなり変わった。あどけなさが薄れて、少し大人っぽい印象を受ける。
一花が尚政に気が付き、笑顔で手を振る。その姿に尚政はドキッとした。まるで別人みたいだ。でも駆け寄ってくる姿は一年前のままだった。
「やっぱり一花の方が早く着いてた。そんな気はしたんだよな〜」
「一年振りだからなんかいろいろドキドキしちゃって、いつもより早く着いちゃいました」
「……いつからいたの?」
「三十分くらい前かな?」
それを聞いて尚政は吹き出す。
「もう、どれだけやる気満々なのさ。まぁ一花らしくていいけどね」
一年会っていなかったとは思えないくらい、二人はすぐに打ち解けていく。
「じゃあ行きますか?」
尚政が手を差し出すと、一花は嬉しそうにその手を握った。
「どこに行くんですか?」
「うーん、ベタだけど動物園? 一花の候補に入ってたし、俺も最近行ってなかったからさ。一花は動物好きなの?」
「結構好きです。大きい動物が特に」
「また独特な……象とか?」
「あとキリンとかバッファローとか」
「……バッファロー……。なんでかな。頭の中にサバンナが見えるよ」
動物園を候補に入れたのは屋外だから。寒い中なら、自然と手を繋いだり出来るかなって考えてたの……。