背伸びしても届かない〜恋を知った僕は、君の心に堕ちていく〜
* * * *
ネックレスを受け取ると、一花の顔がパッと明るくなる。イルカが両ヒレで真珠を掴むようなデザインで、ピンクの真珠がかわいらしく輝いていた。
「やっぱり作ってもらって正解だったね」
「うん、ありがとう……すごく嬉しい」
一花の笑顔は見慣れているはずなのに、時折見せる大人っぽさに、今日の尚政はドキッとすることが多かった。
これがJKなのだろうか。俺も二年前まで同じ高校生だったはずなのに、一花が全く別の存在に見える。
「ねぇ先輩、ネックレスつけてくれる?」
「えっ、俺が⁈ 自分でつけなよ」
「髪が邪魔でつけにくいの。せっかくだからつけたいし……ダメ?」
「……仕方ないなぁ」
一花は尚政にネックレスを渡すと、髪を右肩の上にまとめる。オフショルダーから見える肩から首筋にかけ、白い肌が露わになる。
ネックレスをつけるために近付くと、ほんのりとフローラルが香り、尚政は息をするのもままならない。
一花は着実に女の子から、女性への階段を登っている。そのスピードに尚政は戸惑うばかりだった。
胸元のネックレスを見て、一花は喜びの声を上げる。
その時、ネックレスを受け取ったカウンターのすぐそばの出入口から海に出られることに尚政が気付く。
さっきのグループがまだ近くにいたらと思うと、あまりいい気はしなかった。そもそも一花はなんで気まずそうだったんだ? 何かあったんじゃないかと深読みしそうになるのを抑えて、一花に声をかける。
「ここから海に出られるみたいだけど、どうする? 再入場出来るみたいだし、行ってもいいよ」
「海? 行きたい!」
二人は再入場のためのスタンプを手の甲に押してもらい外に出ると、気持ちの良い海風が吹き抜けて行く。
水族館の中も、ショーエリアでは外に出たものの、目の前に広がる海に比べると開放感が全く違っていた。
砂浜に足を取られて転びそうになった一花の腕を、尚政は軽々と引っ張り上げる。一花はその腕にしがみついたまま離れなかった。
「あのね、今日水族館って言ってたから、先輩とこうやって海デートが出来るかもってちょっと期待してたの」
「……水族館とどこか違うの?」
「水族館だと人がいっぱいいるけど、海なら二人きりになれるかなって……」
一花は恥ずかしそうに尚政の腕に顔を埋める。いつもながらストレートな言葉につい笑みが溢れた。