背伸びしても届かない〜恋を知った僕は、君の心に堕ちていく〜
「先輩と高校の制服でデート出来るなんて思わなかった」
「だってあの時の一花、すごい目をキラキラさせてたからさ。これは本気だなって思ったんだよね。そんな約束を忘れられるわけがないじゃない?」
そして尚政は一花の耳元に顔を近づける。
「でもさ、意外と高校生でも通用しそうだよね。鏡見た時、まだいけるってちょっと自信持っちゃったよ」
耳元に吹きかかる尚政の息遣いに、一花の胸がキュンとして腰が砕けそうになった。
こんな感覚、今まではなかった。なんだろう……このままだと私、どんどん欲張りになっちゃいそう……。
「先輩に初めてドキドキした時と同じくらい、今日の先輩も素敵だなって思う」
「本当? じゃあ今日は高校生に戻ったつもりで楽しんじゃおう」
一花の肩に手を回した尚政はにっこり笑った。一花の心臓が飛び跳ねる。
「さて、久しぶりの制服デートだけど、どういうのを御所望ですか? 一花さん」
「……なんでもいいの?」
「なんでもって言われるとちょっと警戒しちゃうんだけど……まぁ俺の許容範囲ならね。一体どんなことねだろうとしてるのさ」
「……いつもはただのデートでしょ? 今日は……恋人っぽいデートがしたいなぁ……なんて。ダメ?」
この表情を見るのっていつぶりだろう。先輩は困ったように笑いながら頭を掻いていた。
「恋人同士の感覚って、俺はよくわからないんだけど」
「そんなこと言ったら、わたしだってわからないよ。だから今日は、私が先輩としたいことをしてもいい?」
「……なんか嫌な予感しかしないんだけど……」
そうは言いつつも、一息ついてから、諦めたように一花の頭を撫でた。
「じゃあ今日は恋人ごっこってことね。わぁ、なんかドキドキするんだけど」
尚政が否定せずに受け入れてくれたことにホッとする。少しずつだけど、前向きになれているのかもしれない。
先輩のそばにいられるのは嬉しい。こうしてデートしてくれるのも嬉しい。でもやっぱり私、どんどん先輩のことが欲しくなってきてる。きっと諦めるなんて出来ないと思う。
もしこのままの関係でしかいられないなら……フラれてもいいから、もっと私の気持ちをぶつけるべきなのかもしれない。
「今日はいろいろドキドキさせるから、覚悟しててね、先輩」
「……お手柔らかにお願いします……」
同じ制服を着ているのに、先輩はやっぱり大人。私はいつまでも同じ目線には立てない。