背伸びしても届かない〜恋を知った僕は、君の心に堕ちていく〜
しばらくすると、芽美が彼氏と一緒に教室に入ってくる。芽美の幸せそうな顔を見ると、友達としてやはり嬉しかった。
「いきなりごめんね! まだ二人に紹介してなかったなぁと思って。一組の佐藤翔太くんです」
芽美に紹介された翔太は、恥ずかしそうに一礼をした。優しそうな雰囲気が芽美と合っているような気がする。
「佐藤翔太です。よろしくお願いします!」
そう言われ、一花と智絵里も笑顔で挨拶をした。
「それでね、さっき翔太くんと話してたんだけど、夏休み中ってなかなか会えないし、みんなで勉強会をするのはどうかなって」
「あ、あの、俺の家で何人か集まって勉強したら、だいぶ捗るんじゃないかなぁと思って」
何人かという言葉が引っかかり、一花と智絵里はすぐには返事が出来なかった。
「それって私たちの知らない人もいるんでしょ? 私はいいや。一花は?」
「私もいいかなぁ。だったら智絵里と勉強するし」
「あっ、いいね、そうしよう」
二人は納得したように頷き合うが、そこに慌てて芽美が入ってくる。
「他のクラスの子と交流するのも良くない? なかなかない機会だし」
「めぐたんさ、私たちが人見知りなの知ってるでしょ? そういうの苦手」
しかしなかなか引き下がらない芽美の様子に、智絵里は何かを察したように目を細めた。
「……駅前のカフェのジョッキパフェで手を打ってもいいけど」
「……わかった」
「よし。一花はどうする?」
「……智絵里とめぐたんの二人としか話さなくてもいいなら……」
「おっ、それいいね。私も二人以外はガン無視するから」
「……ま、まぁ来てくれるならいいや」
ホッとしたような顔をしたのは、彼氏の方だった。
この二人、絶対に何か企んでるわね……。智絵里は裏があることには気付いたが、黙っていた。どうせ断っても、新しいことを考えてくるに違いない。それなら一度、様子を見てみようかしら。