背伸びしても届かない〜恋を知った僕は、君の心に堕ちていく〜
 学園祭も終わりの時間が近付いていた。一花は尚政を見送るため入口まで歩いていた。

 横目で尚政を見つめると、胸が熱くなる。自分でもおかしいと思うくらい、先輩を好きだと自覚する。

「私ね、高校生になったら大人だって思ってた。でもいざ自分が高校生になったら、想像していたよりもずっと子どもで、なかなか先輩に追いつけないことがもどかしい……」
「……でもいざ大学生になっても、やっぱり子どもだなって感じるよ。いつになったらちゃんとした大人になれるのかなぁって、いつも考えてる」
「そんなものなの?」
「まぁ俺はそんな感じ」
「……早く先輩に釣り合うようになりたいな……」
「もう釣り合ってると思うよ。一花、大人っぽいし」
「……本当?」
「もしかして気にしてた?」
「……」

 珍しく落ち込んだように一花は下を向く。そのことに気付いた尚政は、一花の頭を撫でる。

「今年はもう終わっちゃったけど、来年の大学の学祭に来ない? 面倒で毎年サボってたけど、一花となら行ってもいいかな。もちろん私服でね」
「いいの?」
「前に言ってたよね。一緒に大学に通うことは出来ないって。俺も来年最後だし、だったらこういう時に大学デートでもしようよ。どう?」
「行きたい……」
「よし、決まり。まだ先だけどね、ちゃんと覚えておくからさ」

 そこへ柴田がニヤニヤしながら戻ってくる。

「二人で楽しめたか?」
「はいはい、感謝してるよ。じゃあまた連絡するから」

 二人の背中を見送ると、一花はニヤける顔を隠すように両手で覆いながら、調理部の喫茶店へと向かった。
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