捨てる旦那あれば拾うホテル王あり~身籠もったら幸せが待っていました~
「その。
……あなたの、お名前は?」

「僕の、名前?」

不思議そうに彼が、眼鏡の下でぱちぱちと何度かまばたきをする。

「そうだった、まだ名乗ってなかったな」

くすくすとおかしそうに笑いながら彼は手を差し出してきた。

「僕は和家(わけ)
和家悠将(ゆうすけ)だ。
よろしく、初見(はつみ)李依さん」

「短い間ですが、よろしくお願いします」

その手を笑って握り返した。

名前を聞いたところで、頼んだ料理が出てくる。

「食べようか」

「そうですね」

促されてナイフとフォークを取った。
ベリーがたっぷりのったパンケーキは美味しそうだ。

「和家さんはお仕事でいらしてるんですか?」

「仕事と言えば仕事だな」

悪戯っぽく彼は言うが、それで信じろだなんて難しい。

「こちらにはいつまで滞在予定なんですか?」

「特に決めてない」
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