捨てる旦那あれば拾うホテル王あり~身籠もったら幸せが待っていました~
「こういうのはどうだ?」

和家さんが指した先には、三日月にルビーをあしらったペンダントが飾ってあった。

「今、李依はあの三日月みたいに欠けているが、僕が満たして満月にしてやる」

じっとレンズの向こうから和家さんが私を見つめている。
きっと彼は私に同情してくれているんだと思う。
そうじゃなきゃ、こんな好意を向けるわけがない。

「……そうなったら素敵ですね」

ぽっかり空いてしまった私のこの心が、満たされるときなんてくるんだろうか。
ううん、今は考えない。
和家さんと束の間の非日常を楽しむだけだ。

夜は海が見える、素敵なレストランだった。

「それ、似合ってるな」

「……ありがとうございます」

褒められるのはなんだかくすぐったい。
帰ってきて、和家さんに買ってくれたドレスに着替えた。
濃紺の、背中が大胆に開いたドレスは恥ずかしいが、たまにはいいと思う。

「うん、そのペンダントもいい」

「……よかったです」

私の胸もとには三日月が揺れている。
和家さんの〝三日月みたいに欠けている〟というのが今の私にぴったりで、それで気に入って自分で買おうとしたが、現金どころかカードも和家さんの持つ、私のお財布の中。
押し問答の末、最終的に渋々彼に買ってもらった。

食事はフレンチだった。
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