捨てる旦那あれば拾うホテル王あり~身籠もったら幸せが待っていました~
私のどこを気に入ったのかさっぱりわからない。
でも彼に甘やかされるのは、……嫌じゃ、ない。



「おはよう、李依」

次の日も起きたら、リビングで和家さんが新聞を読んでいた。
それになにか言っても無駄なので、ちらっとだけ見て洗面所へと足を向ける。

「なんだ、ぐっすり眠れなかったのか?
もしかして枕でも合わないのか?」

冗談めかして彼がくすくす笑う。
それになにかがプチンと切れた。

「そうですよ!
うちの枕に比べたらここの枕、最悪なんですから!」

「……は?」

予想外の反応だったのか、和家さんが笑いを止めて私の顔をまじまじと見る。
しかしかまわずに、私はさらに続けた。

「それなりの枕を使っているんでしょうが、うちの会社の枕の足下にも及びませんね。
我が社の枕は頭を包み込むように柔らかく、どの方向を向いても首に負担をかけない設計なんです。
あの枕を知ったら、他の枕では眠れません。
ただ、弱小会社なのであまり世に知られていないのが大変惜しいところです……が」

一気に捲したてたところで自分のやらかしたことに気づき、みるみる顔が熱くなっていく。
ううっ、今すぐ寝室に戻ってベッドに潜り込んで隠れたい。

「そんなに違うのか?」
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