捨てる旦那あれば拾うホテル王あり~身籠もったら幸せが待っていました~
港に着き、和家さんはいつもと同じくホテルまで私を送ってくれた。

「いよいよ明日、帰るんだな」

「そう、ですね」

到着したその日はすぐにでも帰りたかったのに、今ではもっとここにいたいなんて考えているのはなんでだろう。
ああ、あれかな。
帰って親や周りにハワイで結婚直前だった彼と別れたなんて説明するのが億劫だからかな。

「朝食を食べたあと、空港まで送っていく。
最後だからって夜更かしせずに、早く寝ろよ」

もう明日にはお別れだっていうのに、和家さんは意外とあっさりしていた。

「あの」

「うん」

「……本当に、帰るんですか?」

出ていこうと彼の、シャツの裾を掴む。
顔は見られなくて俯いた。
これが、なにを意味するのかなんてわかっている。

「帰らなくて、いいのか」

ぼそりと落とされた言葉は今までと違い、酷く重い。

「……はい。
和家さんで上書きして、あの人との思い出をここに置いていかせて」

私から出て声は酷く小さいうえに震えていた。
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