捨てる旦那あれば拾うホテル王あり~身籠もったら幸せが待っていました~
考えだすとドツボに嵌まっていく。
よかったのは、入籍と引っ越しは帰ってからの予定だったのくらいだ。

目の前では太陽がだんだんと海へ沈んでいく。
今晩の宿をどうにかしなければとは思うが、ちっとも身体は動かない。

「……はぁーっ」

「なにか困っているのか?」

もう何度目かのため息を落としたら、日本語で声をかけられた。
顔を上げると、日本人男性が立っている。

「どうかしたのか?
具合でも悪いのか?」

私よりも少し年上に見えるスーツ姿で眼鏡をかけた男性は私を心配してくれていた。

「あ、えっと。
なんでもない、です……」

それに対して私は、ただ笑うしかできなかった。

「なんでもないわけがないだろう。
もう暗くなったのに、こんな場所に女性ひとりで」

気づけば日はすっかり暮れ、辺りは暗くなっている。

「その、あの、えっと」

理由を聞かれたところで、知らない人間にハワイまできてここで挙式予定だった彼と別れましたなどと言えるわけがない。
口を濁していたら、彼の口からはぁーっとため息が落ちた。

「わかった。
今は聞かないでおいてやるからとりあえずこい。
ここにひとりにしておくわけにもいかない」
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