捨てる旦那あれば拾うホテル王あり~身籠もったら幸せが待っていました~
「李依のご両親にも挨拶に行かないとな。
あとは」

声をかけたものの彼は聞こえていないらしく、ブツブツ言いながらぐるぐる歩き続けている。

「和家さん!」

「ん?
どうかしたのか」

少し強く声を出したら、ようやく和家さんは足を止めて私へ視線を向けた。

「その、私のために無理はしなくていいので。
別にアメリカでも出産はできますし」

ハイシェランドホテルのグループ本社はアメリカにある。
和家さんも通常はそこで仕事をしているはず。
なのに私のために日本で家を買うとかさせられない。

「初めての出産が言葉の通じない外国だとか不安だろ」

「それは……」

私の英語が日常会話すらおぼつかないのは彼にすでに知られている。
それに不安がないか言えば不安しかない。
それでも、彼に無理はさせられない。

「別に仕事はリモートでもできる。
それに用があるときはプライベートジェットですぐだからな」

「プライベートジェット……」

そんなものを持っているだなんて、和家さんが想像していた以上にお金持ちでくらくらした。
さらにアメリカまでがすぐって感覚も理解できない。

「いっそ本社を、日本に移動させてもいいな」
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