捨てる旦那あれば拾うホテル王あり~身籠もったら幸せが待っていました~
「それでも、です。
逃げだすのは嫌」

「わかった」

伸びてきた手がぎゅっと私を抱き締める。

「でも無理はするな。
少しでもダメだと思ったらすぐに言え」

「はい」

和家さんは優しい。
私は本当にこんな優しい人に、縋ってもいいのかな……?



翌日は和家さんと一緒に実家へ帰った。

「……車両貸し切り」

「どうかしたのか?」

「いえ」

笑顔を作って和家さんの隣に座る。
実家まで車だとかなり遠いが、新幹線なら二時間かからないからそちらになった。
……のはいいが、車両貸し切りは意味がわからない。

「李依のご両親ってどんな人なんだ?」

私の手を握り、和家さんが聞いてくる。

「普通の人ですよ。
父は普通の会社員ですし、母もパートです」

だから私のでき婚以上に、相手がこんなセレブだなんて知ったら、気絶しかねない。
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