捨てる旦那あれば拾うホテル王あり~身籠もったら幸せが待っていました~
「おかえり。
……あら、まぁ」

出迎えてくれた母は、和家さんの顔を見てぽっと頬を赤らめた。

「はじめまして、お義母さま」

「あらあら、まあまあ。
さあさ、お上がりなって?」

さらにはこれ以上ないほどいい顔で和家さんが挨拶をしたので、母がそわそわしだす。
〝お上がりになって?〟なんて言葉遣いを母から聞いたことがない。

「おとーさん、ただいま……」

「やっと帰ってきたか。
あれから元気に……」

私に気づいて新聞から顔を上げた父は、後ろに立っている和家さんを見て言葉を途切れさせた。

「……誰だ、お前」

父の声は低く、和家さんに喧嘩を売っていた。

「その。
紹介したい人がいるって言ったでしょ?
結婚しようと思っている、和家さん」

「和家悠将と申します」

和家さんが頭を下げたが、父は憎々しげに睨んでいる。

「もう、立ったままでなんなの?
どうぞ、お座りになって」

微妙な空気をぶち壊すかのように、母の声が響いた。
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