捨てる旦那あれば拾うホテル王あり~身籠もったら幸せが待っていました~
そんな子供時代を送ったら家は嫌なところとインプットされ、帰りたくない場所になるだろう。

「……私は」

これは、私の想い。
私の決意。

「和家さんとの子供をいらない子だなんて絶対に言いません。
愛情を注いで育てます。
和家さんとも温かい家庭を築けたら、と思っています」

妊娠がわかったとき、ひとりで育てる困難には憂鬱になったが、産みたくないとは思わなかった。
和家さんとの子供だから、産みたい。

「私は和家さんが、好きなので」

ハワイでのあの日々で、私は和家さんを好きになっていた。
ただ、まだあの人に未練があって一歩が踏み出せなかっただけだ。
しかしその未練はハワイに捨ててきた。
もう私を縛るものはなにもない。

「……嬉しいな」

ゆっくりの眼鏡の奥で彼の目が開く。

「李依が僕を好きだと言ってくれるなんて」

こちらを向いた彼と視線が合った。
ゆっくりと彼の目尻が下がる。
それはとても幸せそうで、それでいて今にも泣きそうに見えた。

「こんな幸せ、あっていいのかな」

「いいんですよ」

勝手に手が伸び、彼の顔を自分の胸に押しつけた。
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