捨てる旦那あれば拾うホテル王あり~身籠もったら幸せが待っていました~
「はい。
和家CEOの子供を身籠もりましたので、結婚することになりました」

「あ、そう、なん、だ。
おめでとう。
今後のことについては近いうちにあらためて相談……で、いい、かな?」

課長はうまく状況が把握できていないらしく、視線は定まらないし、言葉も切れ切れになっているが、仕方ないよね。

「はい、それで大丈夫です。
よろしくお願いします」

頭を下げて自分の席へ戻る。
あとは会社の出方を待つだけだ。
和家さんと私が親しい関係みたいだ、っていうだけで気にするくらいだ。
プライベートな問題に突っ込むのはよくないとあれから思ったのか、結婚報告したときはとりあえずなにも言われなかったが、この先はわからない。

「……ねえ」

「……あれ」

時間が経つにつれ、また私の噂が広がっていく。
今度は、浮気して他の男と子供を作ったのがバレて、ハワイで結婚直前の彼から捨てられた女と最悪度がランクアップした。
さらに、そんな悪女に騙されて結婚させられる和家CEOは可哀想、というのまでついている。

「……いちいち説明するの、面倒くさい」

いっそ、サンドイッチマンみたいに、旦那になるはずだった人と別れたのが先で、和家さんと知り合ったのはそのあとです、とか書いた看板を背負っておきたいくらいだ。
もっとも、説明したところで周りは面白がっていて、信じる気はまったくないみたいだが。
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