捨てる旦那あれば拾うホテル王あり~身籠もったら幸せが待っていました~
「よろしくお願いします!」

真摯に彼が社長に向かって頭を下げ、私も慌ててそれに倣った。

「はい、こちらこそよろしくお願いします」

それに普通に頭を下げ返した社長は、さすがだ。

話も終わり、終業時間間際だったのでそのまま和家さんに連れられて帰る。

「……わざわざ説明になんてこなくても、私ひとりで大丈夫だったのに」

車の中でつい、口をついて不満が出ていた。

「んー?
たまたま近くに来たから寄っただけだ。
わざわざ来たわけじゃない」

しれっと和家さんは言っているが、そんなはずはないと思う。

「こういうのは二度と、しないでくださいね!」

「こわい、こわい」

私は怒っているというのに和家さんはおかしそうにくすくす笑っていて、さらに腹が立ってきた。

「……別に李依が頼りないとか思っているわけじゃない」

ひとしきり笑い終わったのか、和家さんが真顔になった。

「でも、僕にできることはしたいんだ。
それもダメか」

和家さんが眼鏡の奥から真っ直ぐに私を見ている。
この人はただ、私を心配してくれているだけ。
それにその気遣いが嬉しくないかと言えば嘘だ。
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