捨てる旦那あれば拾うホテル王あり~身籠もったら幸せが待っていました~
なら、今晩だけ。
今晩だけ、彼に甘えるのは許されるのでは?
それに、騙されているならそれでもいいと思うほど、自暴自棄にもなっていた。

「じゃあ、今晩だけ。
お言葉に甘えてここに泊まらせていただきます。
明日にはホテルを探して出ていきますので」

彼に向かって頭を下げる。

「今晩だけと言わず、ここにいる間ずっといればいい」

ふっと唇だけで彼は面白そうにふっと笑った。

「そういうわけにはいかないので」

「まだ断るのか。
いいねぇ。
さらに気に入った」

彼の美しい指先が私の顎を持ち上げ、視線を合わせさせる。

「僕は絶対に、君をものにしてみせる」

じっと私を見つめる瞳は、そのレンズがなければやけどしそうなほどに熱い。
なにが彼のそんなスイッチを押したのか考えるが、思い当たる節はなにもなかった。

「疲れているだろ?
今日はもうゆっくり休むといい。
明日は観光に連れていってやる」

ふっと笑った彼は、とても優しげに見えた。
おかげで心臓が、とくんと鼓動した。

「あの、だから」
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