捨てる旦那あれば拾うホテル王あり~身籠もったら幸せが待っていました~
その目は石炭のように燃えている。

「……うん」

悠将さんの手が私を抱き締める。
ぎゅっと痛いくらい、その手に力が入った。

「なら、僕の手を離してどうするんだ。
絶対に離すな」

いいのかな、私が一度は離そうとしたこの手を再び取っても。
それに。

「でも、悠将さんのホテルが」

「ホテルのひとつやふたつより、李依を失うほうがつらい」

私を抱き締める悠将さんの手は、縋るようで胸の奥が切なく締まった。

「ごめんな、さい」

「わかったならいい」

気が緩んだせいか涙がぽろりと落ちる。
それをきっかけに堰は一気に決壊し、悠将さんの胸に顔をうずめて泣きじゃくった。
今まで我慢していた分を全部流すかのように涙はいつまで経っても止まらない。
泣き続ける私を悠将さんはただ、黙って抱き締めていてくれた。

「止まったか?」

「……ん」

ようやく泣き止んだ私の顔を悠将さんがハンカチで拭ってくれる。
それが、くすぐったくて嬉しい。

泣きすぎて頭がぼーっとする。
悠将さんは私を支え、ソファーに座らせてくれた。
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