若頭、今日もお嬢を溺愛する
宴会の中盤。
酒も入り、だんだん会場が和んでくる。

「大悟、雷十。
ワシは帰る。後は若いもんで楽しめ!」
文悟が、席を立った。

「おじぃ様、帰るの?
新年会くらい、最後までいて?」
文悟を見上げ、すがりように言う杏子。

「ごめんな、じじぃは寝る時間だ…
それに、ワシがいたら下のもんが楽しめねぇしな!」
「そう…わかった!」
「………杏子も無理はするなよ!
お前も、身体は強くないんだから」
「うん!わかってる!
じゃあ、車までお見送りする!」

文悟と共に出ていった杏子。
出ていったドアを見ながら、大悟が言った。
「雷十」
「ん?」
「杏、亜子に似てきたと思わないか?」
「そうだな!もう杏ちゃんも、大学生だもんなぁ!」

「時々…」
「ん?」
「怖くなる」
「大悟?」
「杏が、亜子と重なって……急にいなくなるじゃないかと思って…」

「大丈夫だ!俺がそんなこと、させない!
もう二度と同じ過ちは犯さない!!」

「そうだよな…ごめん」
「それに…」
「ん?」
「俺の方が無理だ」
「え?雷十?」
「杏ちゃんを失うなんて、そんなこと…俺の方が無理なんだ!」
「雷十、そんなに…杏のことを…?」
「そうだよ。
杏ちゃんは、俺の特別で大切な宝物だ!」

一方の杏子━━━━━━━━
「じゃあな、杏子。
あまり羽目を外すなよ!
大悟と雷十がいりぁ、大丈夫だろうが…!」
「うん!おやすみなさい!」

車が見えなくなるまで手を振り、会場に戻る杏子。
「あれ~?鶴来組の姫じゃないですかぁ!」
「は?」
杏子は、無視をして先に進んだ。

「無視すんなよ!」
手を掴まれる。
「ちょっと、離してよ!!オジサン!」
「フッ!お前の彼氏よりは若いよ?」
「うるせーよ!雷十は、おっさんじゃない!!」
「は?だって、お前のパパと同級じゃん!」
「だから?
そんなこと、関係ないし!」

「てか……」
グッと顔を寄せてくる、男。

「な、何よ…!?」
「お前…亜子に似てきたな。
てか…亜子より、綺麗だな」
「は?」
「やっぱ…美男美女の夫婦からは、美女が生まれんだなー!」
男が頬に触れてきた。
一気に身体中に鳥肌が立ち、震えてくる。

気持ち悪くて堪らない。

そして頬から首、鎖骨へと男の手が滑っていく。
「や…やだ…やめ…て…」
「何、その可愛い反応……」
その間も鎖骨から胸へ移動する、男の手。

「ヤバ…可愛すぎる……興奮してきた…」
「お願…やめ、て…」
「風間 雷十の女が、何言ってんの?
処女じゃあるまいし……」

そんなの、当たり前だ。
雷十にだって、キスしか許していないのだから。

「助けて!!雷十!助けて!!」

声の限り叫ぶと……ガシャーーーーーンとガラスが割れる大きな音がして、目の前の男が倒れた。
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